生殖医療

当院の不妊治療について

2014年にこうのとりセンターを開設し、タイミング法から高度生殖補助医療まで行っています。できる限り患者さまのご要望を伺い、それに沿ったかたちで検査・治療を組み立てていく方針をとっています。

保険診療にあたって

不妊治療の保険適用に伴い、当院における不妊治療でも2022年4月より保険診療を行っています。
人工授精、体外受精、顕微授精、胚移植等が保険適用となります。

保険適用にあたっては下記の通り、年齢・治療回数(胚移植の回数)に制限があります。

・40歳未満では6回まで
・40歳以上43歳未満では3回まで

43歳以上は保険適用に該当しません。保険適用外の患者様の治療は、自費による診療となります。

また、厚生労働省より病院での婚姻関係の確認が義務づけされています。初回の治療時(保険適用)までに以下の書類をご準備いただき、ご持参くださいますようお願い致します。

・婚姻関係がある場合→ 住民票(世帯全員・続柄の記載のあるもの)
・事実婚の場合→ 戸籍謄本(「全部事項証明」原本。コピーおよび戸籍抄本は無効といたしますので、戸籍謄本の原本を必ずご用意ください)

いずれも原本とし、3か月以内に発行したものに限ります。治療周期開始時期に確認が取れていない場合は、保険診療で行うことができない可能性もありますので、お早めにご準備くださいますようお願い致します。

診療時間案内

受付時間
8:30~11:30 ×
13:30~16:30 ×

【診療時間】9:00~12:00、14:00~17:00
ご予約の際はお電話の繋がりにくい時間帯もございますので、WEBからのご予約をお勧めしております。医師希望のある方はホームページ上の「今月の外来医師担当表」をご確認の上、ご予約をお取りください。

不妊内分泌の外来毎週金曜日

日本生殖医学会生殖医療専門医である帝京大学産婦人科名誉教授の綾部 琢哉先生により、一人ひとりの患者さまに見合った治療を行っていきます。タイミング法・排卵誘発・人工授精・体外受精をご相談しながら実施します。ご希望の場合はWEB予約にて、綾部先生の外来のご予約をお取りください。

生殖医療のご予約・お問い合わせ

一般不妊治療

タイミング法(排卵誘発剤併用)

粘液の状態や、卵胞の大きさ、血中ホルモン値などから排卵日を正確に把握し、その日に夫婦生活を営んでもらうことで自然妊娠を目指す方法です。排卵がない場合や、排卵の状態が良くない場合には、卵胞の発育と排卵を促すために排卵誘発剤を併用する方法もあります。

人工授精(IUI)

洗浄濃縮した精子を直接子宮内に注入する方法です。人工授精を行うには、卵管には問題がないことが前提となります。
「人工」という言葉の響きから自然とかけ離れたイメージを持つ方もいるかと思いますが、子宮内に注入された精子が卵管へと進み、卵子と出会ってからの[受精]→[分割]→[着床]→[妊娠]という流れは、自然の状態と何ら変わりはありません。

高度生殖補助医療(ART)

一般不妊治療で妊娠しなかった場合、次のステップとして体外受精や顕微授精といった生殖補助医療(ART)があります。自然妊娠の場合では、排卵された卵子は卵管で精子と出会い、受精して発育しながら子宮内膜へ着床します。この過程のどこかに問題がある場合には、自然に妊娠することは難しくなります。体外受精とは、この一連の過程のうち受精から受精卵の発育までを体の外で行う治療法です。
排卵直前の卵子を卵巣から体外に取り出し(採卵)、培養液の中で受精を待ち(媒精)、受精が確認された受精卵(胚)を子宮内に移植(胚移植)します。

体外受精の適応は、以下の通りです。

  • 卵管性不妊
  • 軽度男性不妊
  • 子宮内膜症
  • 抗精子抗体(精子不動化抗体)陽性
  • 原因不明  など

顕微授精

卵子の細胞質内に精子1個を直接注入する方法です。体外受精で受精しなかった場合や、体外受精では受精率が非常に低い場合、精液所見が不良な場合などに行います。顕微授精を行ったからといって、必ず受精するわけではありません。受精方法が異なるだけで、治療の流れは体外受精と変わりません。

融解胚移植

凍結保存しておいた胚を、子宮環境やホルモン環境を整えてから融解し、移植する方法です。

タイムラプスモニタリングシステム

タイムラプスとは、定位置で一定間隔撮影し、その写真を連続で映し出すことで動画のように見ることが出来る技術です。胚の成長をタイムラプスで観察すると、正常に発育する胚とそうでない胚との違いがよく分かります。従来の観察方法では見過ごしていた胚の分割や成長速度の異常などを見つけ、胚になにか問題があった場合の早期発見にもつながります。状態のより良い受精卵を選別できることで、妊娠率の向上が期待できます。

また、従来の受精確認をはじめとする胚の観察は、その都度インキュベーター(培養器)から胚を取り出して、顕微鏡下で行われていました。一定の状態にコントロールされているインキュベーターから取り出し、顕微鏡の光、温度の低下、ガス濃度の変化といった様々な要因の急激な環境変化に胚をさらすことになり、こういった変化は受精卵にとってはとても大きなストレスになります。タイムラプスでは、インキュベーターの中にいれたまま胚の観察が出来るため、観察のために胚をインキュベーターから出す必要がなくなります。そのため、大事な受精卵への外的ダメージを大幅に軽減させることが可能となり、よりよい環境での胚培養を行うことが出来ます。

※2021年2月より、当院での媒精・培養は全症例においてタイムラプスを使用するため「タイムラプス加算」のご料金がかかります。

反復着床不全

体外受精において、40歳未満の方が良好な受精卵(胚)を4回以上移植した場合、80%以上の方が妊娠されるといわれています。よって、良好な胚を4回以上かつ3回以上移植しても妊娠しない場合を反復着床不全といいます。着床不全の原因としては、受精卵の問題、子宮内の環境の問題、受精卵を受け入れる免疫寛容の異常が考えられます。
個々の症例に応じて適切な検査および治療を選択することができるよう、当院では以下の検査・治療を行っています。

慢性子宮内膜炎検査(CD138陽性子宮内膜炎)

慢性子宮内膜炎は不妊症の女性の約30%が罹患しているといわれ、反復着床不全および不育症患者に関してはその数は60%におよぶといわれています。慢性子宮内膜炎に対し抗生剤の治療後半年以内に体外受精を実施したところ、妊娠率、出産率とも有意に高まったとする報告もあります。
慢性子宮内膜炎の原因は、細菌感染の可能性があるため、子宮内膜基底層に形質細胞が複数存在することが確認できれば、細菌感染によって内膜が炎症起こしていることがわかります。そのため、形質細胞(CD138陽性細胞)を免疫染色することで、慢性子宮内膜炎の診断がつきます。CD138陽性細胞を複数認めた場合には抗生剤治療を行います。

ERA(子宮内膜着床能)検査

子宮が受精卵を受け入れる時期を着床ウィンドウといいます。子宮へ着床する準備が整っている受精卵と、受精卵を受け入れる準備が整っている子宮内膜の、両方のタイミングが合わないと着床がうまく起こりません。
ERA検査とは、患者さまの子宮内膜組織から採取した検体から、子宮内膜受容能に関連する248個の遺伝子発現を分析し、患者さま一人ひとりに適切な移植日を特定します。

EMMA(子宮内マイクロバイオーム)検査

子宮の内膜環境が胚移植に最適な状態であるかを判定します。子宮内膜の細菌の種類と量を測定し、バランスが正常かどうかを調べます。子宮内膜の乳酸菌(ラクトバチルス菌)の割合は着床・妊娠率に大きく関わります。子宮内膜の乳酸菌の割合を上げることにより着床・妊娠率が向上します。

ALICE(感染性慢性子宮内膜炎)検査

従来の方法では特定することが難しかった慢性子宮内膜炎の原因菌を検出する検査です。
分子遺伝学的方法を用いることで慢性子宮内膜炎の病原菌を特定し、かつ個別化された治療が可能になります。

ENDOMETRIO(エンドメトリオ)

ERA検査・EMMA検査・ALICE検査の3つの検査を、一度の検体採取のみで同時に行うことが可能です。

Th1/Th2

受精卵に対する子宮の受容性は、T細胞を介した免疫応答が担っています。T細胞はTh1細胞とTh2細胞に分類され、これらを制御性T細胞が制御しています。正常妊娠では胎児・胎盤を異物とみなし攻撃するTh1細胞が減少しTh2が優位になり妊娠が維持されます。免疫抑制剤であるタクロリムスは、Th1細胞を優位に低下させ、Th1/Th2バランスを制御し受精卵に対する拒絶反応を避けることで、着床に至ると予想されます。Th1/Th2比が高い反復着床不全の患者に免疫抑制剤であるタクロリムスを併用することで、胚移植を施行した妊娠率が高まったことが報告されています。

ビタミンD

ビタミンDの欠乏した不妊患者が反復着床不全と関係しているという報告があります。
貯蔵型ビタミンDである25OHビタミンDが30ng/mL未満の患者にはサプリメントを内服することをお勧めします。

費用について

別途、注射代、検査代などがかかります。

一般不妊治療

保険適用(3割) 保険適用外(10割)
一般不妊治療管理料
(3か月に1回)
750円 -
人工授精 5,460円 -

生殖補助医療管理料

保険適用(3割) 保険適用外(10割)
生殖補助医療管理料
(体外受精周期毎)
900円 -

採卵費用

保険適用(3割) 保険適用外(10割)
採卵基本料
(卵子0個の場合含む)
9,600円 32,000円
+ 採卵個数毎に下記を加算
卵子1個 7,200円(合計16,800円) 24,000円(合計56,000円)
卵子2~5個 10,800円(合計20,400円) 36,000円(合計68,000円)
卵子6~9個 16,500円(合計26,100円) 55,000円(合計87,000円)
卵子10個以上 21,600円(合計31,200円) 72,000円(合計104,000円)

受精費用

保険適用(3割) 保険適用外(10割)
体外受精 12,600円 42,000円
顕微授精(ICSI) 保険適用(3割) 保険適用外(10割)
1個 14,400円 48,000円
2~5個 20,400円 68,000円
6~9個 30,000円 100,000円
10個以上 38,400円 128,000円
卵子調整加算
(顕微授精時に実施する場合あり)
3,000円 10,000円

※ 体外受精と顕微授精を両方実施の場合は、体外受精金額の50%+顕微授精代となります。

受精卵培養費用

保険適用(3割) 保険適用外(10割)
1個 13,500円 45,000円
2~5個 18,000円 60,000円
6~9個 25,200円 84,000円
10個以上 31,500円 105,000円

胚盤胞加算

保険適用(3割) 保険適用外(10割)
1個 4,500円 15,000円
2~5個 6,000円 20,000円
6~9個 7,500円 25,000円
10個以上 9,000円 30,000円

胚移植費用

保険適用(3割) 自費(10割)
新鮮胚移植 22,500円 75,000円
融解胚移植 36,000円 120,000円
下記は過去の胚移植不成功等で医師が必要と認めた場合実施されます
アシステッドハッチング 3,000円 10,000円
高濃度ヒアルロン酸含有培養液添加 3,000円 10,000円

※ 治療開始日の年齢が40歳未満の場合6回まで、40歳以上43歳未満の場合は3回までが保険適応となります。

胚凍結保存管理料

保険適用(3割) 保険適用外(10割)
1個 15,000円 50,000円
2~5個 21,000円 70,000円
6~9個 30,600円 102,000円
10個以上 39,000円 130,000円
胚凍結保存維持管理料 ※ 10,500円 35,000円

※ 更新の場合は2年目以降1年毎の金額。保険適用は最大3年まで。保険適用外は最大10年まで。妊娠等により不妊治療が中断されている場合は保険適用外となります。

その他

保険適用(3割) 保険適用外(10割)
慢性子宮内膜炎検査(CD-138) - 9,900円
子宮内フローラ検査 - 55,000円
精子凍結保存
1年分の管理料込
- 33,000円
凍結精子管理 ※ - 11,000円

※ 更新の場合は2年目以降1年毎の金額。保険適用は最大10年まで。

 

当院は「特定不妊治療費助成事業指定医療機関」です。

埼玉県特定不妊治療費助成制度
この事業は、自治体により指定された医療機関で体外受精・顕微授精を受けた場合、治療に要した費用の一部を助成するものです。当院では助成金に関する書類をお預かりしてから、通常1ヵ月から2週間ほど作成にお時間をいただいております。記載を依頼される際は、自治体への提出期限の遅くとも2週間前までには書類をご提出ください。提出期限直前でのご依頼は対応しかねる場合もございますので、くれぐれも余裕を持ってお早めにご提出いただけますようお願い致します。

助成金制度について

自治体や企業などで、不妊検査費や不妊治療費の助成事業を実施している場合があります。
埼玉県においても、不妊検査費用を助成する「早期不妊検査・不育症検査に関する助成制度」を行っています。

助成要件等は、実地市町村によって異なる場合がありますので、各自治体のホームページをご確認ください。
(体外受精、顕微授精を対象とした「特定不妊治療費助成事業」は、2022年3月31日をもって終了しております)

当院では助成金に関する書類をお預かりしてから、通常1ヵ月から2週間ほど作成にお時間をいただいております。記載を依頼される際は、自治体への提出期限の遅くとも2週間前までには書類をご提出ください。提出期限直前でのご依頼は対応しかねる場合もございますので、くれぐれも余裕を持ってお早めにご提出いただけますようお願い致します。

こうのとりレッスン

不妊治療に関する正しい情報を分かりやすくお伝えする説明会です。現在不妊でお悩みの方、これから不妊治療を始めようか迷われている方、体外受精(IVF)を受けようかと検討している方など、是非お気軽にご参加ください。

2回で1セットの内容となります。

  • 1回目 一般基礎知識:原因・検査・治療について
  • 2回目 高度生殖医療:体外受精・子宮内膜症について

<日時>金曜日 18:00~20:00 月2回 不定期での開催となります。
※当月の開催日程は、ホームページの「お知らせ>こうのとりレッスン予約受付」からご確認ください。

<場所>瀬戸病院6階ホール

<費用>無料

<担当医師>綾部 琢哉 帝京大学産婦人科名誉教授

<予約>要予約制です。ホームページの「お知らせ>こうのとりレッスン予約受付」の予約フォームからご予約ください。